河瀬直美監督と宇多田ヒカルさん

河瀬直美監督の「あん」を観て、この映像作家の透明な視線と、主演の樹木希林さんの食べ物を慈しみながら、暮らしを共存している一途な佇まいに感動しました。

河瀬監督の食べものを見つめる、それを見つめる視線には、義母様の生き方が反映されていたのかな、とこの記事を読んで思いました。

人の愛し方は、生き方だと私は思っています。

私は、かなりファザーコンプレックスでおじさま愛ばかり描いてきましたが、今回、書き下ろしに、実母の生き様をモチーフに肉薄して書いたつもりです。

母は、エロスに生き、文字通り灰になるまで女を生きた人。私は未婚の母の子として生まれましたが、この作品でやっと和解できた気がします。

この作品に着目して下さった編集者さんや多くの方のおかげで、完パケまできました。道のりはまだですが、この作品が私生児とならず、本屋さんの棚に置かれた時、やっと私は自分を救うことができるかもしれません。

書くことは治療ーー。河瀬監督は、次回作が義母様のことだそうです。

どこかしら傷のあるクリエイターの創作活動は、やはり傷のある読み手や観客の心の地下通路で、ばったり出会えることを願ってなりません。私も、宇多田ヒカルさんの歌に震え、また河瀬監督の感性にずしりとした慟哭にも似た叫びをしそうになりました。宇多田ヒカルさんのミュージックビデオを撮られた河瀬監督も、バッタリ、宇多田さんと出会うべくして出会ったのかもしれません。

決して互いの闇を語らず、深い発光を放つような、まだ見ぬ読者様とつながりたい。そういう想いで、書き続けます。

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