新刊『終わりなき夜に濡れる』の書影が上がりました。

小説を再開したのは4年前です。

どうしても書かなきゃいけないのに、書けなかったら自分の人生はどうなるのか。

こんな焦りにかられていた理由は、感情体験を全然できていないからでした。

かつては、私小説を書いていて、身を削りどんどん痩せ細り苦しみ抜きました。足りない頭の自己統合で必死だったと思います。

子役、映画スタッフは、虚構を生きてしまったような時間。リアリティを感じることが希薄でした。2000年を最後に、原稿依頼はなく、提出してもボツだらけでした。

やがて、主婦業に舵を切りました。

女性としての性愛表現を怖いと感じていたことを、うっすら自覚していました。経験値が増えていくにも関わらず、感情が幼くてついていかない、現実はしけたクラッカーを食む日々で、唯一、映画を観ている時だけ感動が迸る。欠陥人間だなあと暗い気持ちでした。

そして、作家への夢は埋没してゆくーー。

感覚、心理的リアリティを、赤裸々に表現できる官能小説のジャンルに思いが募り、50を過ぎてからチャレンジしました。もしかしたら、脱皮できるかもしれない!

今回は、思いがけぬ内的女性が細胞分裂していき、言葉を紡ぎ、観念としての自伝を体験!

まず、「匂い」を皮切りに始めました。

これまでの女性としての焦がれた事象を、エンタメに置き換えて、視覚、嗅覚、触覚、聴覚、味覚をオーケストラのように総動員!

書き手を超えてしまう畏怖を感じた登場人物たちのノワール世界。

まさしく、己の頭の蓋を開け、内部の知覚と感覚リアリティを探り、身を焦がすほどの華と毒が立ち上っていく、大工事だったのです。

似たような過去の海馬の中の体験に、心と記憶が縫合されていった。

これまでは他者からの喝采に飢えてきた生き物でしたが、今回は人間としての生命讃歌を実感することにより、この世の書物やアートが理解できる海馬のレセプターが出来たことが何よりも喜びです。

人として女としての半生に、ひとつの礎を作ることができたと思っております。

よろしかったら、お手にとってみて下さい。とても恥ずかしいですが、私の性愛のカルテと処方箋です。お読みいただけたら嬉しいです。

ただ今、ご予約受付中です。発売は3月24日!

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