ポエムを書いてみました
<小舟を待つ>
私はあなたの頬を両手で挟んで泣く。
冬の虚無の空の空気は、たちまち甘い蜜のようにとろとろになって、心の奥の熾火を起す。まだ無力で、自分でオムツを替えられずに、ただ手足をばたばたさせて気まぐれな何かを掴み取ろうと必死になっていた私の身体は、あなたの猟銃の音にぴたっと止まった。
火薬の匂い。獲物は誰だったの?
私の中の熾火は、あなたとの濃密な空気の中だけで、たちまち火が灯り、命のすべてが炎に包まれた。
オムツを替えてもらい、あなたの胸に密着していたら、何もかも許せちゃうのよ。
あなたの手は、自分の首に私の手を巻き付けるけど滑り落ちてしまうの。残酷な肉食動物に焼かれた身体を骨までしゃぶられた時、私は泣いて、やがて、私もさびしい欲望から、味のない肉を食むように成長したわ。呪詛を唱えるように魂も神に背いた。
でも私の目は抉られなかった。探していたの。その濃密な空気に触れ、熾火に火がつき、真夏の金色の部屋と、真冬のすきま風の漂う売春宿の薄暗さ、どちらも出入りできるあなたを。どちらでも小舟で渡り合える魂に泣く。
私を見つづけて、そして離さないで。だって、売春宿ではオムツはびしょびょ。心と身体の汚れを洗って欲しい。非力な私は、泣くのも忘れちゃった。ねえ、目を反らさないで。もっと、もっと、心の距離を近づけて。発狂寸前の苦しさから救われたい。だって、あなたのリアルが私の社会。
二つの世界を観た私は、大人になって身も心も焦げるほどの、どうしようもない男女の物語を書いているのよ。