鎌倉高校前駅の光景

この光景に、身体が固まった。

12歳の時だった。

私のまわりだけ時間が動いていないのに、人や陽炎が揺れていた。

聖マリアンナ病院で、最愛の人が亡くなり対面したあと見た光景を、この静止画のように記憶している。目の前の坂道をつんのめるというか、爪先から埋まっていくように降りたんだ。どうやって電車に乗ったのかは、覚えていない。

バーバーが死んだのに、世の中が動いている衝撃。夏だというのに、背中が冷んやりぞくぞくして、手足は悪寒に包まれた。

Books にある、集英社刊「バーバーの肖像」は自叙伝です。

もうすぐ、母がモデルの小説が刊行されます。

バーバーも母も、あの時見た陽炎になってしまったのだろうか…。

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